御蔭

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いい香りの入浴剤のおかげもあって、ふわふわとした気分でいられる。

「おいで、乾かしてあげるから」 

彼の長い指が触れて、髪を梳く。自分でも驚く程に指通りが良くなってる。

「いい香りだと思わないか。君によく似合ってる」

深く穏やかな声。耳にかかる息遣いすらも、心地良くて溶けてしまう。

後ろから伸びてくる手。
指には沢山の指輪が着いている。

「最後に人と話したのはいつ?」

その問いに答えることは出来なかった。ただただ、チェーンの擦れる音だけが響く。
彼らは冷たく、硬い。青ざめる唇が言葉を紡ぐことは無いのだから。

「今日は何をした?なんでもいい。話してくれ」

『その黒の主はだあれ?』
お題「さらさら」

5/29/2025, 1:16:03 AM