【イルミネーション】
クリスマスが近づくと、街全体がキラキラと輝く。街路樹は鮮やかなイルミネーションに飾られ、道ゆく人々の足取りも軽く。澄んだ空気が夜空の月を冴え渡らせる。この時期の街を眺めるのが、私はいっとう好きだった。
「またここにいた」
呆れたような君の声に振り返る。打ち捨てられた無人のビルの屋上にわざわざ訪れる物好きなんて、私と君くらいだ。
「ふふっ、だって贅沢でしょ? この綺麗な世界を独り占めにできるんだから」
チカチカとイルミネーションの明かりが眼下に瞬く。北風に晒されて氷のように冷たくなった手を取って、自分のコートのポケットに入れた。指を絡ませて、熱を分け与えてあげる。
「それに、君も隣にいてくれるしね」
「ほんっと……そういうとこが敵わないんだよな……」
辟易したような声色に反し、君の耳は真っ赤に染まっていて、照れているのがよくわかる。そのわかりやすさに思わず口元が綻んだ。
二人きり、手を繋いで。クリスマスの華やかさに満ちた美しい街を眺め続けた。
12/14/2023, 11:36:27 PM