ミミッキュ

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"Love you"

「みゃーん」
 正面玄関の扉の錠を閉めてまっすぐ居室に向かい、扉を開けた途端ハナが大きな声を上げて出迎えてきた。肩を小さく跳ねらせて言葉を返す。
「おぉ、終わったぞ」
 そう言って居室の中に入ると喉を鳴らしながら足元に擦り寄って、椅子を引いて座ると、ピョン、と膝の上に乗って香箱座りして前足で太腿をこね始めた。
「いつも思うが、男の太腿なんて柔らかくもねぇのに、こねて楽しいか?それに俺のなんてもっと柔らかくねぇぞ」
 椅子の肘掛けに頬杖をつく。
 じぃ、とただこねるだけのハナを見る。俺の言葉なんてお構い無しにこね続ける。
──俺の周り、物好きなのばっかだな。
 すると静かにこちらを見上げ、口を開いた。口を開いただけで鳴き声は聞こえない。
「声出てないぞ」
 頭を撫でようと掌を出すと、掌に頭突きをするように擦り寄って自ら撫でられに来た。
 また口を開いた。また鳴き声が出ていない。
──これ、確か《サイレントにゃー》だっけか。子猫が母猫にする……。
 そこまで思い出すと、ハナの顎の下を指で優しく撫でる。気持ち良さそうに目を閉じて顔を上げ、喉を更に大きく鳴らした。
「なんだ、甘えたか」
 顎を撫でていた手をハナの背に移動して、背を毛並みに沿って撫でる。尻尾をまっすぐに立てた。
「さて、飯の用意だ」
 そう言うとまだ喉を鳴らすハナを抱えて床に置いていたハナのご飯用の皿を手に取り、居室を出て自身の夜ご飯とハナの夜ご飯の用意に台所に向かった。

2/23/2024, 12:53:52 PM