月下の胡蝶

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お題《目が覚めると》



春は過ぎ去り命が眠る冬になっていた。


『――おはよう』


旅人の言葉は、どんな言葉よりも優しく重たいものだった。



「……おは、よう」


沈んだ言葉が浮上するには、まだまだ時間はかかるだろう。それでも今、返したかったどうしても。



旅人は何も言わなかった。それでも確かに想いは伝わり繋がっていて、千年たとうが二千年たとうが、オレたちの関係性は何も変わらない。



窓の外では白い花が舞っている、まるでふたりを祝福するかのように。


7/10/2024, 10:41:17 AM