三日月

Open App

冬のはじまり

小六の冬に転校してきた僕|奥園感じ《おくぞのかんじ》は、なっちゃん|三浦夏実《みうらなつみ》と出会う。

転校初日、なっちゃんは窓側の一番後ろの席で、僕は空いていたなっちゃんの隣の座だったね。

なっちゃんは前髪が長く、後ろ髪の肩下まであるロングヘアと一緒に何時もポニーテールに結び、サイドの髪を少し結わずに流していて、六年生にしてはファッションセンスも込で何だか大人びていたけど、笑うと両頬に笑窪が出来るのが可愛くて、物事に対して必死で怒るところとかがまだガキっぽくて··········何だかんだ憎めない女の子だった。

それになっちゃんは天真爛漫、太陽のように明るい子なので、その場にいるだけで周りが明るくなる存在だったね。

仲良くなったキッカケは僕の忘れ物で、忘れ物をして貸してもらってばっかいるうちに会話も増えていき··········気が付けば僕達は友達になっていた。

席替えしたらなっちゃんは僕の斜め後ろの席になったけど、僕が振り向くとよく目があったし、微笑み返してくれたし、修学旅行の実行委員を一緒にやったり、たいくの授業で良くペアになったり、二人の笑うツボが同じなのか、先生の話に僕となっちゃんだけが笑っていたり··········それに家の方向が同じだったので何時もくだらないことを話しながら一緒に帰っていたね。

僕はそんな可愛いなっちゃんにどんどん惚れていって、冬のある日、勇気を出してなっちゃんを体育館の裏に呼び出して告白したんだ。

「なっちゃんのことが好きです。  僕と付き合ってください」

真剣な眼差しで僕が言うと、なっちゃんは少し戸惑った表情をしたままだったけど··········。

「ありがとうかんちゃん、私もかんちゃが大好きだよ。  だからこれからもずっと友達として仲良くしてね!」

暫くしてからなっちゃんはそう言って微笑んだ。

「うん··········」

だから僕達は進展せずいつも通り仲の良い友達だったね。

中学生になってからも、クラスが同じになって席が同じになったり、席が離れても目が合ったり、文化祭や体育祭で一緒に実行委員になったり、帰り道もお互い部活していたけどなるべく一緒に帰って色々なことを話したりして··········。

そしてまた一年の冬が来て··········僕はまた、なっちゃんを体育館の裏に呼び出し、二回目の告白をしたんだ。

でも、二回目の冬も失敗に終わり、笑顔で「これからも友達でいてね!」とお願いされることに。

僕はなっちゃんしか考えられなくて、それから二年生の冬も、なっちゃんを体育館裏に三度目の呼び出しをして告白したんだ。

「何で私なの!?」

なっちゃんはそ言った。

「なっちゃんじゃなきゃ駄目なんだ!  僕はなっちゃんだけを何時も見てる」

すると、クスッと笑ったなっちゃんは静かにコクリと頷いて、僕達は付き合うことになった。

それからは·········と言ってもお金があるわけじゃないから、一緒に勉強したり、一緒に遊んだり··········手を繋いで帰っり、お揃いの安物指輪を買って身に付けたりしたね。

ところが三年生になったなっちゃんは冬に近付くに連れて徐々に体調不良で休む回数が増えていった。

元々身体が弱く喘息持ちだとは聞いていたけど··········僕は心配で堪らなかったんだ。

何もしてあげられない自分が不甲斐なくて··········それでも、この時はお互いスマホがあったから、沢山メールのやり取りをしたよね。

そんな冬のある日なっちゃんは僕にメールでこう言った。

夏美【私たちもう終わりにしない!】

寛治【なんだよ、もう終わりって】

夏美【かんちゃんには私何かよりもっと良い人が沢山いると思うの】

寛治【僕にとってなっちゃんより良い人何かいるわけないだろ】

夏美【ねぇ、かんちゃん、私かんちゃんには絶対幸せになって貰いたいの】

寛治【だったら、だったらずっと一緒にいたい】

そのメールを最後に、なっちゃんからは何にもメールが来なかった。

まっても、まっても、何にも来なくて··········。

ずっと学校にも来ないから、とうとう心配になって僕はなっちゃんの家に行ったんだ。

そしたら、お母さんが出てきてくれて、なっちゃんが入院してることを教えてくた。

お見舞いに行きたいと言ったら、なっちゃんが誰にも言わないでと伝えていたことを教えて貰って行くことが出来なかった。

暫くして、なっちゃんのお母さんから僕のスマホに連絡が来て、なっちゃんが亡くなったことを知らされる。

なっちゃんは治らな病気「ガン」と戦っていたのだ。

それも小六からずっと··········たまに投薬治療で長期で休んだりしていたけど、何時も笑顔だったなっちゃん。

三年生になり、なっちゃんがカツラになっていたのに、それにも気付かない僕。

そんな僕はなっちゃんのお母さんから、なっちゃんが僕の為に書いてくれた手紙があるから取りにおいでと言われて、その手紙を受け取りに行った。

家に持ち帰り、部屋で開けて読むことに。

そこには感謝の気持ちが沢山、たーくさん綴られていた。

そして、本当は六年生の時の告白でOKしたかったこと、将来僕のお嫁さんになりたかったこと、僕との子供が欲しかったことまで書いてあって··········。

なのに最後は「かんちゃん絶対幸せになってね」って書かれていた。

··········そんなの出来るわけないだろ!

··········先に居なくなるなんて狡いよ!

僕はその夜沢山泣いた。

それから一年が経過し··········僕はもう高校生。

また冬が来て、僕は自分の部屋の窓の外を眺めながらなっちゃんとの始まりを思い出していた。

なっちゃん、窓の外は雪がチラチラ降っているよ。

僕はまだなっちゃんのことが忘れられないでいるし、なっちゃん以外は考えられずにいるけど、僕はそれでも良いと思っています。

これが僕の幸せであり、不幸なんかじゃありません。

僕の指には一緒に買った安物指輪が嵌められている。

こんな僕だけどこれからも僕を見守っていてね。



























11/30/2022, 1:35:07 AM