体育祭の競技の一つである、クラス対抗大縄跳び。
クラス全員で大きな縄を一斉に跳び、その回数を競うという競技だ。
他の競技は大して練習回数がないのに比べて、この大縄跳びだけは毎年、毎日のように練習させられる。
朝の朝礼の後と昼休み、毎日毎日跳んで、並び順を工夫したり掛け声を工夫したりして、次第に跳べる回数が増えていく。
体育祭前日の学年リハーサルでは、うちのクラスがいちばんだった。
「明日もこの調子で頑張ろう!」
「最高記録を目指そう!」
そうやってみんなで気合いを入れて、いざ本番。
50、51、52……
あと少し、60回を超えたら最高記録だ!
みんなもう足はヘロヘロだし、疲れ切ってたけど楽しそうだった。
それと同時に「今引っ掛かってしまったら」と走る緊張感。
57、58、59……
「60!」
跳び切ったはずだった。
しかし、60を数えたところで縄が止まった。
私の足元で。
(……あ)
頭が真っ白になった。
しばらくして、自分の足に縄が引っかかってしまったこと、そのせいで記録更新にならず、しかも他のクラスに負けてしまったことを理解した。
クラスメイトから刺さる、なんとも言えない視線。
(……あぁ、ここではないどこかに消えてしまいたい)
その後のことはよく覚えていない。
間も無くして競技終了のホイッスルが鳴って、優勝クラスの発表がされたと思う。
後で友達に「正直、足がしんどかったから、みんな誰か引っかからないかなって思ってたと思うし、気にしなくていいよ!」と言われた。
みんなも私を責めたりはしなかった。
それが逆に苦しかった。
あの時の浮遊しているような、沈んでいるような感覚は、多分ずっと忘れられないだろう。
お題『ここではないどこか』
6/27/2024, 11:08:15 PM