いつも通りの朝がきた
8時過ぎの電車に早足で乗った
車内はいつもより空いていたと思う
駅をふたつほど過ぎたころ
いつもの子が私と同じく
早足で乗ってきた
偶然かもしれないけど
いつも向かい合わせの席に乗って
いつもと同じ朝の時間を過ごす
片耳につけたイヤホンの音に
耳を傾けながら
ちらりと前を向くと
あの子と目が合ってしまった
いつもは逸らすのに
今日はなぜか逸らせなかった
線路の繋ぎ目をいくつか通ったあと
なにか話そうとしたが
あの子も話そうとしたのか
口籠もってしまった
すると
「......いつも一緒なのに笑っちゃいますね」
夏風にゆれる風鈴のような声だった。
そのままお互いに何を話したのか
霞む記憶を掘り起こそうとしても
早朝の朝日が彩った
あの子の眩しい笑顔しか
思い出せなかった
向かい合い続けたあの時に
わたしは今も
夏の幻想を抱いている。
8/26/2024, 10:04:36 AM