イオリ

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快晴

 布団干しなさい。 年上の彼女が言う。

 来週でいい。 うつ伏せで目を閉じたまま答える。

 先週も言ってた来週が今日なの。そして今日は晴れなの。わかる?

 ……はい。 渋々起き上がり、干し始めた。

 不思議だ。面倒くさいから別にいいやと思っていたけど、澄んだ光を浴びていると、心も清々しくなる。きっと布団もふわっふわになる。干して良かった。

 布団干すには最高の日だね。

 もう終わったの。早いね。じゃあついでにクロゼットの中掃除しよう。もう着ない服も捨てちゃってね。

 それは来週でいいや。
 
 だめ。

 どうして。

 どうしても。

 ……はい。 これまた渋々取り掛かった。

 普段そこまで気にしていなかったが、こんな服あったっけ、というようなものがいくつも詰め込まれていた。これはもう着ないな、これも着ない、これは……洗濯してから決めよう。作業を始めてみると自分でも意外なほどテキパキ進む。日の光を浴びたおかげかな。


 終わった。

 あら、もう?早いじゃん。

 晴れだからね。

 なにそれ。

 いつもより体が軽い気がする。早く動きたくなるって感じ。

 大げさな。 と言いながら彼女がコーヒーを淹れた。

 それ飲んだら、買い物に行こ。新しいお皿。

 それは来週でいいや。

 だめ。

 ……はい。 ゆっくりとカップを空け、渋々靴を履いた。

 
 皿なんてなんでもいいのに。口には出せないけど。などと考えながら並んで出発する。


 不思議だ。若干、重い気持ちだったのに、歩みは軽やかに進む。一歩進んだら、次の一歩はもう少し広い歩幅で歩きたくなる。もっと広く、もっと早く。前に前に。すごい。快晴バンザイ。

 
 ちょっと。

 ん、なに。

 歩くの早い。

 そう?

 うん。もっとゆっくり。

 ゆっくり?

 ゆっくり。歩くのはゆっくりでいいじゃん。 彼女のほうから改めて手を繋ぎ直した。

 わかったよ。 歩みの熱が収まってしまう残念さはあったが、別のなにかが胸を熱くさせた。

 
 日差し強いね。

 うん。でもゆっくり歩こ。

 ……はい。

 

 

 

 
 

4/14/2024, 12:32:49 AM