たやは

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鳥のように

ここまで来て負けるわけにいかない。鳥のように飛べなくてもいい、ノーミスで次に繋げていけば必ずチャンスが巡ってくると信じて、自分自身を信じて、仲間を信じて、ただやれることをやるだけ。

ボール
クラブ
フープ
リボン

新体操の団体戦が開催される総合アリーナに到着してすぐに会場での練習が行われ、本番へん準備を進めていく。どの学校も強豪だ。ヒビってはいられない。今までたくさん、たくさん練習してきた。練習は裏切らない。「大丈夫。大丈夫」と自分に言い聞かせ、仲間と頷きあい13m四方のマットフロアに整列する。

「いくよ」
「はい!」「はい」「はい!」「はい!」

キャプテンの掛け声とともにフープとボールを持ち、1列にフロアに入っていく。
曲がかかり私たちの戦いが始まる!


やっぱり、鳥でなければダメなのか。
私たちは優勝できず全国大会への切符を手にすることはできなかつた。何か所かミスしてしまい、思うように点数が加点されなかったのだ。涙が止まらない。 
悔しい。悔しい。あんなに頑張ったのに。

「頑張りましたね。でも、あなたたちは技術的にも芸術性についてもまたまだ未熟です。ノーミスだけでは技術点は加点されないし、見てくださる方に感動もあたえられません。」

そこにいたのは、コーチと元全日本強化選手の先輩だった。先輩は将来有望と言われていたがケガで現役を引退したばかりだ。学校の先輩ということもあり、私たちの憧れの的だ。先輩に直接声をかけてもらい、涙も止まった。いや、嬉し涙が滲んできた。私だけの話しではないが、その後、浮かれていたのかどうなったのかよく覚えていない。

次の日の部活で整列した私たちの前に先輩が立っていた。

「これから、あなたたちのコーチに加わることになりました。私の指導は厳しいと思いますが、あなたたちならできるはずです。私は見ている人に感動を届ける新体操がやりたいと思っています。成熟していきましょう!」

私たちが白鳥となって飛び立つ日も近い。

8/22/2024, 3:35:22 AM