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「1年後、1年後かぁ」
帰りに寄ったカラオケで今流行りの曲を歌った後、君はぽつりと呟いた。多分、歌詞に感情移入しすぎたんだろう。いつものことだが、少々めんどくさい。
一応話題に乗ってみる。
「とりあえず、高校は卒業してるよね」
「どーだろ、私頭悪いからなぁ」
「じゃあ、また通学路が同じだったり?」
「それは良い提案だけど、私東京行きたいからさ」
「東京?」
初耳だ、と横を見ると少し悲しげな顔をした君がいた。
「どうしたの?」
「とめてくれないんだな、って」
はて、とめるとは。話を振り返ってみる。
「まさか、東京に行くのを止めて欲しいの?」
君はちょっと顔を赤くして、
「乙女心がわかってないな」
とそっぽを向いた。


1年、1年後は思ったより短かった。
色々伝えたいことはあるけど。
今送り出す彼女が、どうか幸せになりますように。
「いってらっしゃい」
「行ってきま、って何その顔!」
「顔?」
どうやら自分は情けない顔をしているようだ。
彼女はにやにやして口を開いた。
「もしかして、寂しいんだ」
寂しいよ。毎日顔を会わせてたんだから。
でも、折角の彼女の門出。
笑って送り出したい。
「なんでもないよ。手紙、待ってる」
君は1度目を見開いて、
「おう!」
と笑った

5/8/2023, 10:22:07 AM