幸せを運びたい悪魔。

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〜できる事をできるだけ〜

ぎゅっ…ぎゅっ…と、雪を踏むしめる音が聞こえる。
歩いている動物は、なぜか見えない。
何もいないが、聞こえる足音。
ぎゅっ…ぎゅっ…ゆっくりゆっくり足音が聞こえる。
雪が降り積もる中、何も見えないその足音は、誰の足音なんだろう。
すると、きゅっきゅっと足音を鳴らしながら白い子狐がもう一つの足音に近か付いていく。
ふわっ、周りの雪を被っている草木が優しい風に煽られたように静かに揺れた。
すると一つの大きな大きな木のふもとにさっきの子狐と、ゆっくりゆっくり歩いて木のふもとで寝ている親狐が見える。
親狐はもう歳で弱りつつあるようだ。 
子狐は「大丈夫だよ。僕がついてるから」
そう言うように親狐をぺろぺろ舐めている。
親狐に狩もできない、人も呼べない、何もしてあげられない子狐は、親狐を安心させるために顔を舐め、「大丈夫だよ。僕がついてるから」
と、静かに言い続けたのでした。

〜できる事をできるだけ〜終

9/3/2024, 8:53:32 PM