箱庭メリィ

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僕の大切なもの。
カラコロ鳴るおもちゃ。
ピンクのお水入れ
僕を小さくしたようなぬいぐるみ。
夕方のお散歩の時間。
お散歩の時間に会うメーちゃん。

そして僕のご主人!
頭を撫でてくれて抱きしめてくれる、優しいご主人!

4/2『大切なもの』



「好き!」
「え、ほんと?」
「付き合って!」
「ほんとに?」

告白をした相手が、面白いくらいに顔を赤くして尋ね返してきた。

昼休み前の会議終了後。早めに終わった会議に嬉々とする面々を横目に、部屋に戻る前の目当ての彼を捕まえて告白した。
もちろん嘘だ。罰ゲームで彼に告白するよう言われたのだ。

「う、嘘じゃないよね?」
「ほんとだよ」

内申にんまりしながら、恥じらいを演出して彼を見上げる。
自販機の上にある黒い時計が正午のベルを鳴らした。

「好きなの。付き合って」

昼休みに入って各部屋から出てきた社員のざわめきが聞こえだす。
誰かに見られる前に真実を話さないと。彼の返事を待つ前に打ち明けようと口を開くと、

「って、ほんとはウッソ――」
「じゃ、付き合ってもらうからね」

彼は真剣な顔で言うと私の手を強く握ってきた。
今度は私が顔を赤くする番だ。
奥手な彼がこんなに積極的に手を握ってくるなんて。そもそもタイプじゃないから嬉しくもないし。
私は慌てて訂正する。

「え?嘘だよ?エイプリルフールだよ?」
「うん。だから僕確認したよね?嘘じゃないよねって」
「そう、だからウソ」
「エイプリルフールってね、午前中までなんだよ。あなたが僕に付き合ってといったのは、午後になってからだ」
「ええ、ウソウソ!聞いてない!」
「僕はちゃんと確認したし、君も答えた。とにかくも、これで僕たちは恋人同士だ。じゃ、まずランチデートでもしにいく?」

ぎゅっと手を繋がれたまま、外に向かうエレベーターホールの方へぐいぐいと進んでいく。
ちらちらとランチに向かう別の社員たちにすれ違いざまに見られた。
やばい、こんなやつと恋人同士だなんて知られたくない。ありえない。

振りほどこうとするにも彼の握る手の力は強く、私は引っ張られるようにエレベーターの前に立つ。

「今日ノー残業デーだったよね。君もこないだ予定はないと佐藤さんに愚痴ってたよね。このまま晩もデートしようか」

エレベーターホールの前で手を繋いだまま、数人の社員がいる前で彼は宣言してきた。同じ部署の人間がたまたまおり、驚いたようにこちらを見ている。
私の顔面は蒼白になった。


4/1『エイプリルフール』



2人で歩くバージンロード。
腕を組むなんてこれが最初で最後なのかな、なんて思う。
昔はこの腕によくぶら下がっていたのに。

ああ、これで明日から――いや今日この瞬間からこいつのものになるのか。

どうかこの子が、この2人の歩む道が幸せでありますように――。

3/31『幸せに』



「おはよう」
「おはようございます」

廊下ですれ違いざまに挨拶を交わす。
いたって普通に見えたはず。

言葉を交わすことはない。
交わす必要もない。
仕事上の連絡はチャットで済むし、対面する用事は後輩に任せている。

周りからはいい上司に見えているに違いない。
気は遣えるし、周りのことをよく見ており声もよくかけている。仕事も出来る。
だが、私は彼が大嫌いだ。
彼と本当は挨拶すらしたくないのだ。

それでもするのは、大人だから。社会人だから。

今日も何気ないふりで会釈しすれ違う。
私の背後で爽やかに別の社員に挨拶する彼の声が聞こえた。


3/30『何気ないふり』

4/3/2026, 4:00:23 AM