「これまでずっと
自分に嘘をついていたのではないですか?
だからそんなに怖いのでしょう
私を愛することが
人を愛するということは
同時に自らをも愛するということです
愛情のない人から真の愛情は生まれません
今のあなたは痛々しくて見ていられない
まず、何よりも
あなたはご自身と向き合ってください」
ー
私は慌ててその文章から目を逸らした
気がつくと
手紙を持つ手はがたがたと震え、
私の視界は霞み、
とめどない涙が頬を伝っている
どうしてこんな事になった?
この涙は何だろう
図星を突かれた痛みの為だろうか
全てを捨てた放蕩息子ならぬ放蕩娘の私が
今更
何にこんなに感情を揺さぶられているのだ?
こんな痛み、捨ててしまえばいい
手に持っている紙切れを破り捨てて
この前二丁目でナンパした茶髪のお姉さんに連絡をして、酒を飲んで、体の隙間を埋めれば、いつも通りそれで良いじゃないか
だが私の体はそれをしなかった
何分、何時間、
どのくらいそうしていただろう
なぜか
私の目はやけに雑に
その文字の続きをなぞり始めた
「しかしその過程で
あなたが孤独の思いに泣くのならば
いつでも私をお呼びください
私はあなたを愛しています
自分を愛せない不器用なあなたを誰よりも
肯定し、慕います
今すぐにあなたの隣に行って
あなたのその細い線を抱きしめて差し上げたい
もし必要であればいつでも私を傍に」
私はそこでその紙切れを手放し
大きな一歩を踏み出していた
大きな、
大きな一歩だった
こんなに大きな一歩は
今までに踏み出したことが無い
7/12/2023, 11:40:01 AM