私の目に映るもの
私に手に触れるもの
私の耳に流れてくるもの
全て綺麗なものだけが渡される
私は唯一無二の宝物のとして囲われていた
だから今
私の目の前に立っているものは
私の世界にはあるまじき存在だった
燻んだ金糸に
褪せた服
鈍い色をした装飾品
私に差し出された手は荒れていて
発する言葉は気怠気な空気を纏っていた
「お嬢さん、俺と一緒に来てくんない?」
私の綺麗な世界にそぐわない存在なのに
覗き込んできた瞳はどこまでも蒼く美しく透き通っていて
その瞳に惹き込まれるように
私は気づいたら彼の手を取ってしまっていた
そして私の世界は綺麗なものと
知らないもので溢れた世界になった
【蝶よ花よ】8/8
8/8/2024, 1:59:14 PM