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あれは昨年の11月のこと。何年も病院に入院している叔母の誕生日を祝いに、病院を訪れました。

コロナの流行以来、度重なる面会制限のためにわずかしか会えなかった叔母は、病室に現れた母と私の顔を無言でじーっと見つめていました。

入院したばかりの頃はもっと元気だったのに、この一年ぐらいは口数もめっきり減っていました。それでも我々のことはちゃんと認識してくれて。何か言いたげな目で見つめられると、思わず涙がこぼれてしまった私は、マスクで顔が隠れていることに感謝しました。

面会時間は10分。私達が一方的に話しかけるだけでしたが、時間はあっという間に過ぎて行きました。母が、

「もう疲れたでしょ。そろそろ帰るね。」

と言うと、

「まだ疲れていないよ。」

か細い声で言った叔母のこの言葉が、最後に交わした会話となりました。

この1月に71才でこの世を去った叔母。最後の数年は病院のベッドで過ごす日々で、悲しいこともあったでしょう。

でも、明るくてよく冗談を言っていたあなたのことを、私はずっと忘れません。天国では自由になった体で、とても上手だった歌を歌って、たくさんの人を喜ばせているでしょうか。いつか私も、もう一度あなたの歌声を聞ける日を楽しみに、毎日を精いっぱい生きて行こうと思います。

8/3/2024, 8:05:08 AM