H₂O

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スリル


周りの音がだんだんと聞こえなくなって、自分の鼓動がやけにうるさく響く。
どうなるかわからないのに、そのわからないのが怖いのに。手だってこんなにも震えているのに。
なぜか口元には笑みを浮かべていた。心のどこかで期待している自分がいた。
ふっ、と息を吐いて、通りすぎていく足音に笑みを深める。
このドキドキとハラハラとした感覚が癖になりそうで、身を潜めたまま少し遠くに隠れる仲間に無事を伝えるため、親指を立てる。
相手もそれを見て親指を立てるが、あ、と口を開いたまま固まった。
え、と不思議に思う間もなく、後ろから声が聞こえた。
「みーつけた」
無邪気なのに、その言葉は今の自分にとっては最も恐ろしい言葉だった。

「罰ゲームありでかくれんぼしようよ」
そう誘ってきた鬼に快諾した五分前の自分に後悔した。

11/12/2022, 1:41:52 PM