"やるせない気持ち"
「頼まれた物、持って来たぞ」
昼過ぎ、俺が以前頼んだ物を持ってうちの病院に来た。
「おぉ、ありがと……。そこ、置いといてくれ……」
「どうした?顔色が悪いが…」
「別に…、何でもねぇよ……」
実の所、さっきまで見ていたニュースが不穏なものだらけでいつも以上に辟易して、この気持ちをどうすればいいのか分からない。だからいつもの椅子に座りながら、飛彩に当たらないようにさっきからずっと顔を逸らしている。
少しばかり沈黙が降りると不意に優しく覆い被さる状態で抱き締められた。少し驚いて肩が小さく跳ねる。
「何があったか知らないが、貴方の事だ。きっと辛いもの、悲しいものを沢山見聞きして、負の感情を綯い交ぜにしたやるせない気持ちを募らせてしまったんだろう?」
そう言いながら、俺の頭を撫でてきた。撫でる度に髪を、サラサラ、と梳かれる。
「やめろ、餓鬼扱いすんな…」
「以前のお返しだ。恋人を癒したいのは俺も同じだからな」
などと返され何も言えなくなって背に腕を回し抱き締め返し、飛彩の胸元に顔を埋める。胸にわだかまりグチャグチャに縺れていた色々な負の感情が、次第に解され溶けてゆく。
「…ありがとよ。けど…、もう少し、このままで……頼む…」
「あぁ、承知した」
時間が許す限り、しばらく抱き合っていた。
8/24/2023, 12:59:04 PM