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世界の終わりに君と

これまたリバイバルテーマだ。
正直に言うと、6月に入ってからずっとリバイバルテーマなのだが。

まぁそんな事は、今は置いておくとして。
問題は「世界の終わり」というテーマだ。
まず、リバイバル中の
「世界の終わりに君と」
それ以外記憶にあるのは
「明日世界が終わるなら」

…世界は何回終わるんだい?

もう、皆まで言わなくてもわかるだろう。

ネタが無いのだよ。

こういう時は…仕方ない。
彼らにお任せしよう。

────────────────────────
午後3時。

渋めに淹れたお茶といつもの絶品饅頭で一息入れていると、隣で一緒にお茶を啜っていた助手が話しかけてきた。

「博士は、明日世界が終わるなら誰と居たいですか?」

まったりとするお茶の時間になかなかミスマッチな話題だ。

「急にどうしたの?」

「昨日読んでいた小説がそういう内容だったので」

そういえば彼女は、以前も恋愛モノで盛り上がっていた事がある。

「君は影響を受けやすいタイプなんだね」

僕の言葉は彼女の耳には届かなかったのだろう。

「で、博士は誰と居たいですか?」
彼女は爛々とした目をしている。

どうやら興味の方が勝ってしまっているらしい。
適当な事を言って逃げるのも難しそうだ。

「世界の終わりに一緒に居たい人、ねぇ…」

僕は、左手に持った食べかけの饅頭を置く代わりに、右手に持っていたお茶を机の上に置いた。
空いた右手をそっと顎に添える。

誰が良いだろうか。

学生時代の友人は、それぞれ家庭を持っている。
世界の終わりには僕とではなく、自分の家族と居たいだろう。友人には友人の幸せがあって然るべきだ。

ならば血縁者である僕の両親とは、どうだろう。
世界の終わりの日に両親と──そこまで思った時、二人の声が脳内に響いた。
「結婚は?」「〇〇君のところは2人目だって」
過去、正月の帰省の度に言われた言葉だ。
耳にタコができそうだったので、正月帰省の回数を減らした。ここ数年はご無沙汰だ。
そんな両親に会ったら、世界の終わりまで独身であることを責められ、「孫の顔が見たかった」とか言われ続けるのだろう。
想像しただけでげんなりとしてきた。やめよう。

世界が終わってしまうならば、怒号が飛び交うような空間で最期を迎えるのは論外だし、胃が痛くなる空間も御免被りたい。
出来れば、お茶を飲んで美味しいお菓子をつまんで他愛もない話をする──この3時の休憩のような穏やかな最期が良い。

ならば、世界の終わりに一緒に居たい人は──。

「はーかーせ!」

思考に囚われていた視界が、彼女の顔を大きく映した。
そのあまりの近さに肩がビクッと震え、危うく持っていた饅頭を手から落とすところだった。

「わっ!ビックリした」

「何回も呼んでいるのに無視するからですよ」

彼女はプクッと頬を膨らませ、ご機嫌斜め“風”な顔をしている。

「わざとじゃないよ。考え事をしていると周りが見えないし、聞こえなくなっちゃうんだよ」

「それ危ないですからね!」

日常だって意外と危険はあるんですから。
少しは現実も意識しないと。
怪我したら大変なんですよ。

彼女の口からお小言がポンポンと飛び出てくる。

何故だろうか、耳を打つ彼女のお小言は痛くない。
その事実に驚いている自分と、受け入れている自分が居る。

やはりそうなのだろうか。
コレが答えなのだろうか。

君が嫌がらなければという大前提は勿論あるが──

世界が終わるなら、いつものように──
僕は、君と居たいみたいだ。

6/7/2024, 2:38:15 PM