「あ?何?
早く降りたい?
あー、もー、散々聞いたって。
黙って待ってろ。」
雲の上、耳打ちしてくる雪の子の1人に、銀髪に鎧を纏った冬将軍が言いました。
雲の上には雪玉に手足が生えたような雪の子たちがたくさん。
ゆっきー
ゆっきー(はやくふりたい)
と騒いでいます。
毎年雲の上で冬将軍は彼らと鉢合わせ、そして同じような状況になるのです。
ゆっきー
ゆっきー
雲の上で楽しそうにぴょんぴょん跳ねる雪の子たち。
そのうちの1人が待ちきれず、雲の隙間からぴょんっと飛び降りました。
それを見た何人かも続いてぴょんっ、ぴょんっ。
「ああ!待て!」
ゆっきーーー………
声が遠ざかります。
「今から行っても霙になるだけなのに……」
はあっ、とため息をつく将軍。
「いいか?あいつが合図を出すまで行っちゃ駄目だ!」
遠くにいる雪おこしを指さして、冬将軍が言いました。
ゆっきー…
「大体何でみんな毎年俺の周りに集まるんだ。
合図を出すあいつの周りにいればいいだろ。」
ゆっきー
ゆっきー(だってこわいから…)
雪おこしは雷なので、雪雲の帽子を被った鬼のような風貌の男なのです。
「だからって俺だって将軍で甲冑も纏ってんだから怖いんじゃないのかよ。」
ゆっきー!(こわくなーい!)
わいわいうれしそうにとび跳ねる雪の子たち。
はあ。とため息をつく将軍は、合図があるまで、なんだかんだ言いながらいつも彼らの世話をするのでした。
「雪を待つ」
12/15/2024, 9:18:12 PM