「風のいたずら」
クラスでは全然目立たないあの子。
いつも端っこにいて、本ばかり読んでいるあの子。
放課後、木の下のベンチで本を読む君を見かけた。
何気なく君を見つめる。
君は僕に気付かない。
そんな時間がしばらく続いた。
さて、じろじろ見るのも悪いし帰ろう、そう思ったとき。
強い風が吹いた。
風は彼女の読む本のページを捲る。
そして、彼女の黒髪を輝かせた。
彼女の天の川のような髪を見たとき、僕は気づいた。
僕の心まで、彼女のもとに飛んでいってしまったことに。
いや、いくら髪が綺麗だからって、ただの内気な女の子だろ?
あんまり目立たない、ただのクラスメイトだ。
あの子にときめいたのは、きっと風のいたずらのせいだ。
そうに決まってる。
ぼけっと君を見ていると、ふと目が合った。
そして、こっちを見て静かに微笑んだ。
君はこんな顔で笑うんだね。
僕の鼓動は知らず知らずのうちに早まり、強まる。
これは恋じゃない。自分に言い聞かせる。
ただの風のいたずらだ。
ただの、風のいたずらのせいだ。
……なんて思ってたことが懐かしい。
君に出会えてよかった。
1/17/2025, 10:40:05 AM