あの胸の高鳴りは、確かに本物だった。
触ったら傷つくのでは、と
恐れるほどきれいな肌。
輝く黒に、つぶらな瞳。
体は全体が覆えるほど小柄で
適度に丸みを帯びていた。
僕はひと目で彼女に恋をした。
彼女を迎え入れてからは、
あんなに傷つかないよう気を配っていたのに。
僕のポケットから落ちた彼女は、
かけていたカバーを脱ぎ去り
冷たい地面に叩きつけられた。
傷ついた彼女を震える手で胸に抱き、
さめざめと泣きながら、彼女との出会いを思い出していた。
携帯ショップの店員を横目に、恋をしたあの日を。
「人でなくとも」
⊕初恋の日
5/8/2024, 12:34:40 AM