エルルカ

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【お題:落ち葉の道】

 秋という概念はこのレークスロワにはない。
 そもそも、春夏秋冬という概念が無に近い。

 それがなぜかと問われれば、日本のように四季折々というものがないからである。唯一、日本に近い文化を持つ、桜華國が四季に近いものがある。
 ま、地球だって同じだ、日本から一歩外に出てしまえば、四季なんて感じられないらしいから。あ、僕は海外旅行をしたことがないから、詳しくは分からないけど。

 僕がレークスロワに来る前は、日本でも北に位置する地域に住んでいたので、なんとなく想像はできる。
 年の半分は雪か寒さに晒されていたからね。春と秋は特に感じにくい地域だった。

 だから、レークスロワに来て、季節を感じられないことには然程違和感は持たないけれど。
 けれど、ふと懐かしくなる。

 カレンダーを見ると十一月も後半。
 異世界だっていうのに、ココの月日の流れも、時間の流れも地球と何もかわらない。

 ユークドシティに居る限りは、機械技術だってほぼ同じ。
 テレビもあるし、ラジオもある。スマホはないけど、通信技術はあるんだ、スマホの代わりに魔力で通信するイヤホンがある。なぜイヤホンなのかは、作った人に聞いてみないとわからないかな。

 まぁ、何が言いたいって、一見前いた場所と変わらないのに、季節感がないだけで異世界だって嫌でも理解させられるんだ。
 テレビから流れるのは、季節の情報ではなく、ユークドシティ内の事件や事故の話。

 今の時期だったら、恋人向けに幻想的なイルミネーションの話や、落ち葉の道にニュースキャスターが立ち、見所を中継していただろうに。
 そんなものは一切ない。

 この世界の日常が、僕の中の日常と掛け離れば掛け離れる程、帰れないを実感する。

「シエル」

 ぼーっとテレビを眺める僕を現実に引き戻すように、耳元で甘く名前を囁く声がする。
 シエル、それは僕が、本名から一部を切り取り、この世界で名乗ることにした、偽名(なまえ)。

「燼兎くんか、どうかした?」
「どうかって、シエルがあまりにもぼやっとしていたので」

 本気で心配だと、顔に書かれている彼の頭を撫でて、大丈夫だと伝える。
 なんにしろ、彼の番に選ばれた時点で、僕はこの世界から出られやしないのだ。

 諦めにも似たため息を吐く。
 脳裏に浮かんだ、誰もいない落ち葉の道は、そっと見て見ぬふりをした。

ーあとがきー

お久しぶりです、エルルカです。
年の前半は仕事の繁忙期で、文章が書けず、繁忙期が終わったから文章書くぞ!となったらなったで、久しぶり過ぎて書けず……。
リハビリを兼ねて、一年近くぶりに更新です!
此度の語り部はシエルちゃん。探偵事務所ドラセナの従業員です。
時間軸を言うなら、レークスロワ最新の時間軸が彼、彼女達。
ドラセナ所属の方々は皆様転移者ですが、世界は様々。シエルちゃんは、日本から来た子です。
彼女自身、この世界ではちょっと重たい役目を背負っているのですが、それもどこかで語りたいところですね。
それでは、今回はここまで!
では、またどこかで。

                 エルルカ

11/26/2025, 10:23:44 AM