喜村

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 学校が休みである現在、冬休み中。
外は寒く、ちらほら雪さえ舞っている年始。
 俺には付き合って1ヶ月の彼女がいる。しかし、実はまだデートさえしたことがない。
この1ヶ月では、クリスマスやお正月など、カップルには嬉しいイベントが目白押しなのにも関わらず、まだデートはしていないのだ。
 通常であれば、一緒に下校して他愛ない会話をするだけで、どこに行く、ということをしたことがないのだ。彼女と一緒にいれれば、俺はもう満足なのである。
 ちょっと冬休み期間中だから一緒にいれる時間が減っているだけであって。
 それに--
(どうやって誘えばいいんだよ……)
 俺はスマホを片手にため息をつく。
会いたいな、なんて、男の俺から言う言葉なのだろうか。女々しく思われないか?
 悩んでいるうちにも時間は刻々と過ぎていく。
付き合って初めての長期休みに何も進展がない、なんて。
 意を決した。
 コール音一回。速攻彼女は電話をとってくれた。
「あ、もしもし」
『いきなり電話きてビックリしたぁ』
 あぁ、この柔らかい声。これが俺の自慢の彼女です。
「いきなりでごめん、あのさ、今日、一緒に……」
 どこか特別に出掛けなくても、君といっしょの空間があれば、俺はそれでも幸せだけれども。
君といっしょに【特別】を作れることは、もっと幸せだよね。
 いつの間にか、舞っていた雪も目視できない、穏やかな冬の陽が差し込んでいた。


【君といっしょに】

1/6/2023, 12:17:20 PM