300字小説
三日月ブランコ
軽い気持ちで行った心霊スポットで俺は若い母親の幽霊に憑かれた。同じく幽霊になっている娘を見つければ成仏してくれるという。
『あの子はいつも私の帰りを公園のブランコに乗って待っていたの』
今時、どこの公園も危険だとブランコは撤去している。それでも俺は彼女の朧気な記憶を頼りに娘を探した。
ようやく見つけた母娘の住んでいたアパート。が、近くの公園のブランコは数年前に撤去されて無くなっていた。
もう一度、夜に母親と向かう。暗い中、無いはずのブランコを漕ぐ音が響き
『お母さん!』
黄色いブランコから娘が飛び降りて駆けてくる。
『おかえりなさい』
『ただいま』
二人が消える。その向こう西の空に三日月がひっそりと光っていた。
お題「ブランコ」
2/1/2024, 11:54:18 AM