役たたず、出来損ない………なんでもできる兄と比べられて、僕が罵られた回数は数知れず。
家での居場所がない中、兄はいつも僕を気遣ってくれた。成績優秀で、運動もできて、リーダーシップもあって、それでいて優しくて。
そんな兄はなにもできない僕にこんなにも良くしてくれる。怖かった。
上手くいかなくたっていいって、みんな言うけど……親はそれを認めてくれはしないし、優遇されるのは兄で冷遇されるのはいつだって僕。
勉強ができる兄は褒められ、例えいい点をとっても僕には嫌味ばかり。褒めて伸ばすってことを知らないのか。
まぁ、こんな親に褒められたとして成績が伸びるかはいささか不明だが。
そんな時に、僕は音楽に興味を持った。高二の初夏のことだった。あんな両親が僕の趣味にお金をかけてくれるわけはないし、密かにアルバイトをして死ぬほど頑張って専門学校に行けるまでになった。
もしアルバイトをしてるなんてバレたら、そんなことをする暇があるなら勉強しろだなんて言われることはもちろん、家に金をいれろと言われるに違いないと踏んだ僕は、兄にすら話さず貯金を続けた。
そして、高三…卒業したその日に、上京して仕事が安定した兄に連れられて家を出た。
兄はすごい人だった。僕のアルバイトのことも、行きたい学校のことも、全部知ってた。
そして僕が卒業したその日に、僕宛てにって分厚い封筒をくれた。
助けるのが遅くなってゴメンって、涙ぐみながら言ってた。
……僕の兄は優しくて頭もいい。でも、それだけじゃない何かがあって、僕はそんな兄が大好きだ。
8/10/2024, 10:00:05 AM