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星が溢れる


濃い藍色の夜空を背景に、一人の少女が立っている絵があった。少女はその満天の星空から降ってきた星を両手の手のひらで受け止めて、その星たちをつぶらな瞳で見つめていた。
その絵には『星が溢れる』とタイトルがつけられていた。
それを見たある人は言った。
「星があふれているのか。この子の手には乗り切らないほどの星が降ってきているから、手のひらいっぱいいっぱいになっていて、あふれているんだね。そう思うとこの少女の顔もどこか嬉しげに見えないかな?」
無表情だった少女の顔が何故だか嬉しそうに見えてきて、満たされているような少女の顔はさっきよりも優しく見えた。
すると、別のある人はこう言った。
「星がこぼれているんだ。この子の手のひらならまだまだ乗せられるのに、傾けてしまったり、バランスを崩してしまったりするから、だからこんなにも地面に星が落ちているんだ。もちろんいっぱいになってもこぼれてしまうけれど、いっぱいになる前にこんなにもこぼしてしまったんだね。そう思うと、なんだかこの子も悲しそうに見えないかい?」
先ほどまで嬉しそうに見えていた少女の顔が、どこかもの悲しげで、少し視線を下に向けたそれさえもうつむいてしまったように見えた。
どちらも同じ文字を書くのに、どちらも同じような意味合いではあるのに、こんなにも見方が変わってしまうなんて。
同じようにその絵を見ていた君に問いかける。
「君なら、何をあふれさせて、何をこぼすんだろう?」

3/15/2023, 2:05:37 PM