意味がないこと
「ふと気になったことがあってスマホで調べてたら、なんかだらだらしちゃってさ。気づいたら何時間も経ってたんだ。ほかにもやりたいことあったはずなのにさ、もったいないことした」
「あー、あるある」
あっちこっち行っちゃってさ、際限なくいじっちゃうんだよね。わかるわかる。
「宿題する時間がなくなったから、諦めて寝た」
「それはちょっとどうかと思うぞ」
先生に怒られることとか明日の自分が困ることより、その時の自分の睡眠欲求を優先したってことだ。一見真面目そうに見える後輩だが、自分の欲求に素直すぎるところがあるから、たぶん不真面目。いや、あえていうなら問題児?
「意味ないよね、あのだらだら時間」
「んー……」
責めたくなる気持ちはわかるけどね。実際、有意義かどうかって言われると、本当に調べ物をしていた時までは間違いないだろうけれど。
「いろんな本読んだ上の受け入りだけど、めっちゃ真面目すぎてつまんないかもだけど、いまの人たちって生産性に囚われすぎてるんよ。そのせいで、いろいろと見落としてると思う」
なんの本だったか忘れたけど。なるほどな、って目から鱗だったはずなのに肝心の本のタイトルを忘れる私よ……。
「つまり?」
「意味ない・もったいないも、本当は意味あった・もったいなくないってこと。君の例でいうなら、なんにも考えない時間が欲しかったんじゃない? それも大事じゃん」
後輩は詭弁だっていうかな。そう思ってチラリと見たけれど、ふむふむとうなずいていた。あ、納得したっぽい。
「でも、まじで意味ないこともあると思うよ」
「たとえば?」
「誹謗中傷」
「急にリアルなんだけどわかる。人攻撃するより自己研鑽するほうが有意義……あ、これが生産性に捉われてるってこと?」
「まあ、それ言われたらそうなんだけど」
それでも、他人を攻撃してカタルシスを得ることに意味があるなんて思いたくない。あくまでも個人の意見。私は絶対にしないと硬く心に誓って生きてるよ。
「後輩、君の意見を聞きたいんだけどさ。うちの弟が最近ランニング始めたんだよ」
「健康的でいいじゃん」
「ジェットババァとタイマン張りたいってのが動機なんだけど、意味なくない?」
「筋肉と持久力つくから意味ある。大丈夫」
(いつもの3人シリーズ)
(ネタをくれた身内ありがとう。またぼちぼち更新していきます)
11/8/2024, 1:07:30 PM