『流れ星に願いを』
まだ凍えることさえもある春の夜にレジャーシートを敷いた寝袋に包まって星空を見ている。流星群が来るというのに今夜は満月。月より明るい流れ星はそうそうあるものではない。
「流れ星に願いごとしたことある?」
「あるよぉ。けど基本全然お願いできないねぇ」
ゆったりした口調を聞くにそうだろうなと内心思いながら明るい月とひそやかに輝く星を眺める。
「お願いできなかったけど叶ったことはあってね、だから流れ星にお願いするのはけっこうご利益あるのかもしれないなぁ」
「ふぅん。どんな願いごと?」
しばらく返事が聞こえないので視線を隣にやると、もじもじしている同級生と目が合った。
「一緒に星を見てくれる友達ができたらな、って」
照れ笑いにこちらが照れくさくなってきて互いに空の方を向いた。月より明るい光が一条、軌跡を描いて消えていくのが見えた。
「火球だ!」
興奮の抑えきれない大きな声が隣で響く。寝袋から這い出てカバンをかき回し、時間や場所を慌ただしくメモする横であんなものがあるのかと星の世界への驚きをまた新たにする。
「すごいね!すごかったね!」
「ああ、びっくりした」
「すごかったし、君と見られたことがすごくうれしいよ!」
照れも何もなく本当に嬉しそうな笑顔を見てこちらも嬉しくなる。スマートフォンを取り出して火球の目撃情報を探す傍ら、空を見上げればささやかに流れる星がひとつ。見て!と声を上げて手招きするので願いごとは半端になってしまったけれど、いずれまた叶うだろうとスマートフォンを共に見ることにした。
4/26/2024, 4:12:07 AM