hashiba

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二人で外飲みなんて久しぶりで、ついつい酒が進んでしまった。酔いの回った彼を連れ、ゆっくり歩いて帰ることにしたのが二十分ほど前。中心街からは既に遠く、夜も深いため周囲に人の気配はない。空に雲一つなければ風も吹かず、不規則な足音が住宅街に小さく響く。眠くないかと振り返って尋ねると、微妙、などと文字通り曖昧な返事。重たげな瞼と緩んだ頬が月明かりでよく見えた。何だか随分と幸せそうだ。このままキスがしたい、なんて思ってしまうあたり自分も大概酔っているのだろう。何事もなく家に辿り着けるよう、少し見張っていてくれないか。月に傍迷惑な依頼をしつつ、その手をとって再び歩き始める。


(題:月に願いを)

5/27/2024, 8:52:22 AM