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『青空はどこまでも続いている───』
爽やかな音楽と、空を見つめる制服姿の少年。タイトルが浮かびエンドロールが流れる。

駄作だったな。
懇々と流れるエンドロールを消してキッチンに立った。空っぽの冷蔵庫から発掘した枝豆をレンジに突っ込む。

始まりから終わりまでパッとしない映画だった。登場人物は終始悶々としていたし、展開も妙に暗い。リアルな人間像だなんだと銘打っておきながら、現代の軟弱な若者をこき下ろしてやろうという意図が透けて見えた。
これだから老人が描く青春モノは見るに堪えないのだ。

貴重なテスト前の土曜日を無駄にしてしまった。誰が悪いのかと聞かれれば、テスト期間に映画を見だした私が悪いのだけど。私がテスト期間だって知っているのにDVDを借りてきたママにだって責任はあると思う。
とりあえずリビングの机に教科書を広げて枝豆を齧ってみる。やる気は出ないが、起きてきたママに怒られるのも面倒だ。

中学に入ってからなんだか上手くいかない。中間テストではそこそこ点数を取れたのに、夏休みが開けた途端に勉強が分からなくなった。特に数学。クラスの友達とはなんだか合わないし、担任はウザいし。
うちのクラスの担任は話が長い。ホームルームの度に一々西中生としての自覚をだとか、相応しい振る舞いをだとか言わないと気が済まないらしいのだ。なんの特徴もない公立中学に自覚も何もないだろうに。
そんなことよりもっと実のある話をしてほしい。教師は社会に出たことがないからできないのかもしれないけど。
中学に上がってそれを聞いた時は落胆したものだ。偉そうに説教をする先生たちだって、社会に出たことはないんじゃないかって。昔は大人はもっと立派なものだと思っていたのに。

教師って結局、生徒のことを集団としてしか見てない。
私は勉強も運動もできないし、顔も可愛くない。友達も多い訳ではないから、なんで生まれてきたんだろう、なんてしょっちゅう思う。
生徒だって真剣に悩んでるのに、それをまるで分かってない。なんにも見えてないくせに人生の先輩みたいな顔をして説教するのだ。
ほんと、やってられない。

はあ。降下したやる気を立て直すために溜息をつく。今日は図書館にでも行こう。
天窓から見える青空を見て思った。

どこまでも続く青い空、だっけ。
続いてたって何の役にも立たないじゃないか。友達でも運命の相手でも神様でもいいから、誰か私を助けてくれればいいのに。


『どこまでも続く青い空』

10/23/2023, 3:53:23 PM