ゆかぽんたす

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「ビッグマックにサイドメニューはポテトで。あ、ポテトLサイズに変更してください。ドリンクはコーラ。それとこのクーポン使ってナゲット5ピース。ソースはバーベキューで。と、あと三角チョコパイもこのクーポンでお願いしまぁす。あー、あと単品でフィレオフィッシュ」
一体どんだけ食うんだよ。
凹んでるから奢れ、って、不躾なメールが深夜に届いた。無視をするわけにもいかないから家を訪れてみれば、
「お腹減っちゃった。マック行こ」
俺を呼びつけ、足にして、奢らせる。で、極めつけには自分の分だけさっさと注文する。しかも量が半端じゃない。とんでもねぇ女だな。呆れを通り越して感服しそうだ。
「で?何が原因で俺はこんな夜に振り回されてんだ?」
運転する俺の隣で黙々とジャンクフードを食べる彼女。人の車なのにちっとも気を使う様子はない。
「あー……呆れない?」
「内容による」
「じゃあ言わない」
「お前なァ……。そもそも、こんなに世話を焼いてやったのに礼の言葉も無しか」
「それは感謝してるよ!ありがとう、ごちそうさま」
「ったく」
別に、理由なんてどうだっていい。マックでそんなに笑顔になれるんなら安いもんだ。そうは思っていても口には出さなかった。それを伝えたらコイツはまた調子に乗るし、しかもなんだか、癪だ。
「お礼にポテト分けてあげるね」
「要らねぇよ」
「なんでよ。美味しいよ?夜中のジャンク。背徳感やばくて」
次から次へテンポよく彼女の口の中へポテトは消えてゆく。どうせ明日になって、“顔が浮腫んで外出られない”とか喚くに決まってる。いつだってそうだ。コイツの行動は突発的なものばかり。少しは先を読んで行動すりゃいいのに。
「おいしいよ」
「そうかよ」
「うん。しあわせ」
信号が赤になって隣を見る。相変わらずポテトにうっとりする助手席のお前。羨ましいとか、美味そうだなんて少しも思わない。けどなんか、ここまで振り回されて俺にはご褒美の1つも無しかと思うと、それはそれで苛つく。
「ねぇ。青だよ」
それには答えず、彼女のほうへぐっと顔を近づける。暗がりの中で、グロスなんだかポテトの油なんだか分からない艶を持ったその唇を塞いだ。当然、しょっぱい味がした。
「こんな塩っぽくちゃムードも台無しだな」
そして何事もなく再びアクセルを踏んだ。彼女は何も言わない。きっと、不意をつかれて固まっているに違いない。呑気に食ってるからだよバーカ。少しは俺のことに興味を持ちやがれ。
次に赤信号に止まる時、お前の唇はどんな味になっているだろうか。どうせジャンキーなものでしかないんだろうが、せめて、油っこいポテトは控えろよ?

2/5/2024, 9:36:29 AM