今年の夏は、あっという間に過ぎ去ってしまった。
今月はずっと青い風が吹いている。
青い東風が。
晩夏を告げる青い風が。
異常気象だ。
夏が猛暑化してきた最近の異常気象の中で、珍しく私たちに概ね有り難い、異常気象だ。
涼しい青い風を堪能する私たちの周りで、大人たちは、人間による地球温暖化の影響だ、冷夏で農作物が、と騒ぎ立てている。
国語を真面目に受けていなかった同級生たちは、「青い風」は夏の最中に吹くものだと思っていたらしい。
気持ちはわかる。
歌詞とかそうだもんね。
でも、今回のは俳句用語で使われている方の「青い風」で、それは晩夏に吹くのだ、と、私は知っていた。
というわけで、「青い風」と表現されるような、涼しくて青い東風が吹き始めて、今年の夏は終わってしまった。
今年は、海にも山にも行かず、夏は終わってしまった。
夏休みをとるほど暑くない、と、偉い議員が発言して、その発言は結果として、現場の教師を夏休みすらなく働かせるつもりか、それの何が働き方改革か、と大反発を招き、大炎上した。
それで、私たちの夏休みは守られた。
大人の事情ってのが癪だけど。
きっと何十年かぶりのクーラーのいらない夏休みだ。
私たちは外で風を浴びながら、食べるには既にもう寒いアイスを齧り、「寒いね」と言い合う。
クラゲが打ち上がるようになってしまった海を眺めて、「泳ぎたかったね」と言い合う。
曇りの増えた空を見上げて、「しけてるなぁ」と話す。
蝉はもう鳴いていない。
青い風が吹いている。
涼しい、青い風だ。
異常気象だ。
過ぎ去った夏の中で私たちの、ちっとも夏らしくも青春らしくもない夏休みは、過ぎていく。
青い風が吹き抜けていく。
7/4/2025, 10:23:25 PM