小音葉

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あと少し早く気付いていたら
いつも通り君の家へ寄っていれば
騒がしい蝉の声を言い訳にせず
あと十分、いいや五分でも
ちゃんと耳を傾けていたなら
過ぎ去った過去の重石を今も引き摺りながら
一体どうして願など懸けられようか
どうか呪ってほしい、不帰の愛よ
あなただけを見つめている

まとわりつくような汗を拭って
剥き出しになった腹が鳴るのを恥じる
熟さぬ果実であった頃
あなたと出会った遠い夏
何の変哲もない古びた窓枠が翼のように広がって
その瞳に光を見た
憧れという救済の糸
突然降り出した雨の中、閉じ込められた東屋にて
花咲く太陽が確かにあった
私のそばで、肩を並べて笑っていた
あなたはあの日、神様だった

この恋が焦げた縄と成り果てて
その首を締め上げ続けていたのだと
あと少し聡く息を吐けたなら
飾らない贖罪があると信じられたなら
いいや、もっと遡って省みるべきだ
誰より早くこの首を締め上げてしまえたら
あなたは今も笑っていましたか
誰かの世界を照らしていましたか
どれほど己を呪い尽くしても
あなただけを見つめていても
二度と帰らない想い出だけを引き連れて
けれどあなたは終わらせてくれないね

まだ早いよと呆れて笑う
忘れ物はないかと繰り返し問う
あなたの声を忘れたくない
蝉の声に掻き消されても、この胸に反響する願い
ただ一つの標、私を呪う夢の跡
あなただけを見つめている

(タイミング)

7/29/2025, 10:41:00 AM