愛しい弟と、夏の終わりに湖に出かけた。ふたりだけの恒例行事だった。
──にいさま、にいさま。
そう呼ばれなくなって十数年経ったいまでも、その声を鮮明に思い描けた。
あの子の好きなキャラメルミルクプリンのように甘い。甘くて、とろけるように優しい。
プリンは俺には甘すぎるから、とあの子に食べさせてあげると、キャラメル色の大きな目をこれでもかと輝かせて、一口ずつ大事にスプーンで掬って食べていた。
──にいさま、だいすきっ♪
やわらかく形を変えて広がる、まるでプリンのような声。
その声に呼ばれるのが好きだった。
今年こそ、誘ってみようか。
もう一度、あの愛しい笑顔を見られるだろうか。
ラズベリーピンクの髪を揺らして、キャラメルの瞳は柔らかくて。やっぱりなにも見なくても、思い出せた。
✽ 夏の忘れ物を探しに 25.9.2
9/2/2025, 6:03:35 AM