小さな幸せは、俺の手によって果てしない幸福へと姿を変えていく。
「おにーたっ」
可哀想な子。
とてとてと覚束ない足取りで近寄ってきた弟は、俺の足がゴールとでもいうように俺の足に飛びついて、ぱっと表情を明るくさせた。
「…うん、お兄ちゃんだよ、どしたの?」
「あの、あのね、えっと…」
まるで言ってはだめ、と囁かれているようにびくびく怯えては、真白い服をきゅっと掴んでいた。
「…またお母さん?」
「っ…!」
優しく声を発すると、びくっと肩が跳ねる。
赤く腫れた頬に、赤黒く滲んだ唇。
その青白くて細い腕には、無数の痣が残っていた。
「お、おかーさんは、悪くなくて…っ。ぼくが悪い子だから…っ」
「…でも痛いんでしょ?」
小さくこくりと頷く可哀想な子をそっと抱き上げる。
「お兄ちゃんはいつでも味方だからね。何かあったらすぐに言うんだよ?」
「…うん、」
俺以外は敵で、俺が一筋の光のような真っ暗な世界。
この子が見えているのはそんな世界。
俺はそこから出すつもりなんてない。
俺という存在である小さな幸せが、この子にとってのすべてになるまで。
小さな幸せ #201
3/29/2025, 6:51:36 AM