「本当にお前はかわいくない」
「女らしくないねえ」
「もうちょっと娘らしくしなさいよ」
シャーロットが目を開けると、そこはいつもの部屋だった。ここ数カ月、住み込みで働いている食堂の二階にある部屋である。
「久しぶりに見たな」
それはシャーロットの故郷の夢だった。女性にしては背が高く体格も良いシャーロットはいつもそんな風に父と母から溜息を吐かれていた。
そこから連れだしてくれたのは旅の仲間で、今は別々に過ごしているけれどシャーロットにとっては大事な大事な恩人だ。
そして同じように大事な人たちがいた。食堂の店主であるアリス・ケリーと同じく住み込みで働くカイ、そして店の経理を担うフィン。
三人も旅の仲間と同じようにシャルロットを大事にしてくれる。女なのにとか、かわいくないとか、そんなことは絶対に言わない。
「シャーロットは働き者ね」
「もう終わった? 仕事が早いなあ」
「僕も一緒に鍛えさせてよ」
そんな風にシャーロットは受け入れられていて、ややもすればドライにもみえるけど、湿っぽい田舎に辟易していた彼女にはそれが心地よかった。
そんな中で見た夢は不愉快でしかなかったが、シャーロットは首を振って忘れることにする。
呪縛はそう簡単には解けない。けれど折り合いをつけていくことはできる。
それを彼女は身を持って知っているから、大丈夫。
5/23/2023, 11:48:55 AM