仕事中、怪我をしてしまい病院にきた。
彼に会えないかなと、周りを見回してしまう。
その様子を察したのか、彼の先輩が、〝あっちにいるよ〟と教えてくれた。
やっぱり、会いたくて。
いつも会えるのに、会いたくて。
早る気持ちを抑えられなくて、足早に足を進める。
ベンチまで歩く。
彼の姿が見えないけれど、どこへ行ったのかな。
そう思って周りを見たら、そのベンチに横になっている彼を見つけた。
小さく、彼の名前を呼ぶ。
反応は無い。
もう一度、耳元で名前を呼ぶけれど、一緒だった。
疲れているんだな。
そう思うと、彼を起こすのは申し訳なくて。
音を立てないよう、彼の頬に唇を乗せた。
「いつも、本当にお疲れ様です」
感謝を込めて言葉を残し、足音を立てないようにこの場を後にした。
寝ている彼にキスをしたなんて、恥ずかしくて言えない。
―――――
耳が熱い。
人の気配が恋人だと気がつくのに時間がかかった。それと生まれた小さなイタズラ心。驚かそうと思ったのに、逆に驚かされた。
彼女が立ち去って、人の気配が無くなってから身体を起こす。
「起きてたなんて言えない……」
おわり
お題:誰にも言えない秘密
6/5/2024, 11:29:27 AM