生粋

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【日の出】


今年は

ぐっすり寝ておりました



確か高校を出て数年経った年末

突然ウエダが

ペンションに泊まって初日の出を見よう

と言い出した

数人の参加者が決まり

バタバタと隣県のペンションを手配


当日、車2台に分乗し

フラフラと寄り道しながら

予約したペンションに向かう


近くに温泉館があるらしい

チェックインまで

そこで過ごそうと向かうが休館日


ペンションに相談すると

早目にチェックインさせて貰えるとの事

受付を済ませ部屋に入ると

床が暖かい

初めての床暖房に

田舎者共は大興奮

こぞって床に這い蹲る

もちろん俺も


夕食までの時間は併設のテニスコートを使わせてもらい

これまた初めてのテニス

誰もルールを知らず

卓球のルールを採用


夕食はコース料理

創作フレンチのようなコースだったが

田舎者共は

並んだナイフやフォークの前に硬直する

辛うじて料理に興味があった

俺の朧気な

外側から使うらしい

だけを頼りに

全員で

知ってますともを装う

料理はどれも美味しく

上品な見た目と味に

少しづつ自分を取り戻した田舎者共は

ナイフとフォークの数が減ってくると

小声で

量は少ない

後でラーメン食べに行こう

などと言い出した

一通り料理を食べ終え

ラーメンに

と席を立つと

デザートがあります

と呼び止められ

赤面しながら再度着席

またも小声で

終わりっぽいって言ったじゃん

などと責任を押し付けあい

デザートが運ばれて来ると

何も無かったかのように装う


デザートも美味しかった

スプーンももう残って無い

今度こそラーメンだ

お互いに目配せし

全員が食べ終わった事を確認すると

一呼吸置いて一斉に席を立つ


コーヒーがあります


悪夢再び

赤面のあまり

コーヒーの味は分からなかった


コーヒーの後は

もう誰も立ち上がろうとはせず

チラチラと厨房を覗きながら

気持ちの入っていない談笑を繰り広げた


ペンションの方が

笑いながら終わりを教えてくれるまで


ペンションは持ち込み可能らしく

氷やお湯なんかも準備して貰えると聞き

ラーメンはやめ

コンビニに買い出しに行く事になった


アルコールとツマミ

年越しそば

一通り買って部屋に戻る

テレビを見ながら思い出話なんかしてると

ようやく年末だった事を思い出した


横になろうとすると

綺麗に施されたベットメイキングを前に

田舎者共はまたもソワソワ始め

これもシーツ?毛布?と

困惑のまま

ぱっつーんとなったままの毛布に挟まって寝た


明日は山の方に向かい初日の出を眺める

窓から空を見上げると

星がたくさん出て綺麗だ

きっと晴れる



それはそれは

ぐっすり寝てました


寝ぼけ眼で

朝食に向かい

唯一の目的を見失った田舎者共は

もぐもぐしながら

どうする?

温泉は今日も閉まってる

と切り替えに必死だ


協議の結果

さらに隣の県まで足を伸ばし

お城の観光をして帰ろうと

旅の目的をすり替えた


ペンションの方にお礼を言いチェックアウト

隣県まで結構な道のりだが

昨日の失敗をワイワイ話しながらの移動も

それはそれで楽しい

少しづつ気を取り直し

目的地に到着


降り立ったお城の前で

年末年始休館のお知らせ

を眺め

帰路に着いた

長い長い帰り道だった

1/3/2025, 2:57:23 PM