春の陽射しが穏やかに降り注ぐ、日曜日の午後を少し回った時間。
着慣れない真っ黒なスーツを身に纏い、多少の着心地の悪さを感じながらも、空に向かって上へ上へと迷いなく立ち昇っていく煙を、ただただ無感情に見上げていた。
人は海に還るんだっけ? 空に還るんだっけ? それとも土に還るんだっけ? 神様のお膝元に還るんだっけ?
君はどうなのか、どうするつもりなのか、聞くのを忘れてしまった。何処に行きたいのか、何となくの希望だけでも聞いておけばよかった。そんな小さな後悔がこぽり、こぽり、と微かな音を立てながら腹の底から沸いてきたけれど、見て見ぬ振りをした。
今まさに、何処かへと還ろうとしている君。何処かもわからないそこへと還るために、肉体という重い荷物の尽くをこの場所へ置いていく、その途中の君へ。
これはただの俺の予想だけれど。君の選択なんてもう、俺には知る術もないけれど。
全てのしがらみから解放され、荷物も全部置き去りにし、身軽になった君は······きっと。
「空を、選ぶんだろうなぁ」
突然の突風に拐われた俺の声は、君の残り香と共に空へと舞い上がり、消えた。
◇◇◇
こいついっつも暗い話ばっか書いてんな(デフォ)
4/2/2025, 2:20:43 PM