霜月 朔(創作)

Open App

日陰



日陰の恋なんて、
するものじゃない。
人はそう言います。

それでも私は、
日陰の恋に溺れました。
どんなに苦しくても、
それは自業自得。
そんなことは、最初から、
分かっていた筈なのに。

貴方にとって、
私は仮初の恋人。
満たされない心を埋めるだけの、
只の抱き枕。

それでもいいと、
思っていました。
貴方が孤独を感じる夜に、
私を必要としてくれるなら。

貴方は優しくて、暖かくて――
そして、残酷で。

貴方の腕の中は、
苦悩を忘れさせてくれる、
魅惑のトランキライザー。

けれど、貴方に触れる度に、
心が、身体が、
貴方の全てを求めてしまう。
貴方の心も、身体も、
恋人という立場も――
全部、私のものにしたいと、
強く願うようになっていました。

気付けば、私の心は、
醜悪な黒に囚われ、
闇に堕ちていました。

そして私は、日陰から、
貴方の想い人の背中に、
憎悪を向け、
貴方の心から、
あの人を消してくれないか、と、
悪魔にさえ祈るのです。


1/30/2025, 8:56:36 AM