ここから先その小指のどちらかあるいは両方が、君と彼との約束を反故にして、月は宇宙の海に沈んで、その水面で跳ねた魚は二匹きりで、そんなことに意味を見出そうとして、途方に暮れるだろうか。どうすればいいの。暮れたほうがマシだろうか。どうすれば。裁いてくれ裁いてくれ裁いてくれ裁かないでくれラクにしないでくれ、そう君が乞うのは、君が彼と繋いだ小指を切らなかったから。反故も何も約束は元より不成立。かわいそうに。君は知らないでいる。彼の方を見ないから。彼は自分の小指を君に繋げたまま、自分の小指だけを根本から切り落とした。あの二匹の魚だけが君たちの不正を見ている。意味を、役割を与えてやるならそのくらいでいいだろう。すべてを背負わせてはいけないよ。宇宙を泳ぐ魚に、君に、彼に、その身を守る鱗はないのだから。
11/21/2023, 11:19:32 AM