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どこかに残り香でもしないものか。降って湧いた考えを馬鹿らしいと一蹴することもできず隅から隅まで部屋中を見回し、ひとつ残らず俺の私物であることを確認する。果ては彼女と──元・彼女と行った全てを辿ってやろうかと息巻いてサンダルを引っかけると、郵便受けにふたつ折りの紙を見つけた。封筒ではない。ばくばくと嫌に鳴る心臓を無視して手に取れば知った香りが鼻に届いた。"恋しく思ってもらえたなら、わたしの勝ちでしょうか。"そもそも君に勝てたことは一度もないというのに。


// 遠くの街へ

2/28/2024, 8:03:42 PM