#ミッドナイト
低い照明。
グラスの縁に指が触れる音。
カラン、と氷が揺れる。
店のドアベルが鳴り、外の冷たい空気がほんの一瞬流れ込む。
入ってきた女性は、手馴れた様子でカウンターのパイプ椅子に座り、マティーニを頼んだ。
生意気なビッチ。
店に人気がなくなり、バーテンと俺と女性だけになった。
さっきの女性が席を立ったと思えば、隣に来て、
少し遅れて声を落とした。
「一杯、どう?」
視線は合わない。
距離は、近い。
よく見ると、
唇は椿のようにほんのりピンクで上品だ。
あ、返事をするのが遅れてしまった。
グラスを回す指先に、妙に意識が向く。
グラスを煽って、息をつくと
彼女はそれ以上何も言わなかった。
ただ、静かな店内で氷の音が時折響いた。
ぶっきらぼうなバーテンの口角が少し上がった気がした。
だって今夜はミッドナイト。
1/26/2026, 10:41:34 AM