【見えない未来へ】
人生というのは、真っ暗闇だと思っていた。
そうはいっても、希望がなかったわけではない。人並みに楽しんで生きていたと思うし、嬉しいこともあったし。苦労を乗り越えた達成感も、難しいことに取り組む喜びも、……まあ過大評価だと分かって言うが、かなり充実はしていたと思う。
けれど、いつも。未来が無かったのだ。一歩先を照らすために動いて、そこへ歩を進めているだけ。その先に何があるかとか、どんな道を辿りたいかとか、そういったものが見えない。見渡す限りの漆黒を歩くのは、少し怖い。子供などそんなものだと思うだろう。私もそう思っている。だから、歳が進めば進むほど、その暗闇が晴れず、照らせる範囲が変わらないことに怯えるようになった。
私はいつだって、明日のことを決めるのでやっとなのだ。
「憧れの職業が」
「理想の恋人は」
「子どもが出来たら」
「老後の過ごし方は」
どうしてみんなはそんなに先を照らせるのか、疑問で仕方がなかった。
君のことを好きになったのはそんな頃だろうか。
きらめく一等星?明けの明星?いや、そんな高貴なものじゃない。もっと身近で、親しく、あたたかで、やわらかい。君を想う気持ちというのは、君という人は、そんな光だった。
「家で帰りを待ちたい」
「行ってみたいところがある」
「たくさん二人で過ごしたい」
「歳をとっても同じ会話がしたい」
人生というのは、真っ暗闇だと思っていた。
今なら見える。"君と共に過ごす"という確かな目標が。
未来というのは不確定なものだ。相変わらず暗闇は同じだけれど、私は自信を持って、共に一歩を踏み出そうと君へ手を差し伸べることができる。
きっと君なら、手を取ってとびきりの笑顔をくれるだろうから。
11/20/2025, 11:51:48 AM