――残り14日――
若い男女が集められた部屋。
この集団を管理する男が話している。
「―期限は28日、遅れた者は――」
「なあなあ、今回の期限きつくね?」
後ろの奴が話しかけてくる。
「まあ何とかなるだろ」
「いや、お前はそうかもしれないけどさ」
「そうそう、俺たちには後がないもんな」
その隣の奴も話に入ってくる。
他の奴らも大体同じような事を話しているようだ。
だが実際に焦っている奴はいないだろう。
この日はいつも通り解散後、帰路についた。
――残り10日――
この数日、話題に挙がることはなかったが、今日になってお互いの進度の探り合いが始まった。
「どんな感じ?」
「全然だよ!」
本当の事を言っている奴はほとんどいないだろう。
「よっ!お前はどうよ?」
先日の奴らだ。
「ああ、ぼちぼちかな」
「まじか、俺やばいって」
「俺もまずいわ」
そう言っているが、危機を感じているようには見えない。
おそらく本当の事を言っていないのだろう、それは俺も同じだが。
――残り7日――
今日、ようやく俺は今回の案件の詳細を確認した。
これは厳しい。
血の気が引くようだった。
だが絶望を感じている場合ではない。早急に準備を整えなくては。
――残り3日――
集団の中で明らかに表情の違う者たちが出てきた。
おそらく奴らはこの案件を成し遂げたのだ。
俺もこの3日間で達成せねばならない。
――残り1日――
まずい。
心拍数が急激に上昇する。
手も震え始めた。
様々な感情が頭の中をかき回す。
集中しなくては。
今晩中に達成できなければ…
家族が何か言っていたようだが、内容は入ってこない。
――――
「はーい、授業はここまで。今日締切の課題、この箱に提出していってな」
ぞろぞろと教卓の上の箱にレポートを提出していく。
昼休み。
「いやー、俺今回の終わらないかと思ったわ。徹夜でギリ終わらせたわ」
「俺も、徹夜でなんとか。まじ眠いわ。お前はどうよ?」
「あー、大変だったよな」
「絶対余裕だったろ」
「お前顔が余裕だったし」
「いやいや、まじだって」
そう、俺は昨晩夕食も摂らずに徹夜で終わらせた。
毎回のレポート課題、もっと早くやっていればという後悔。
それでも毎度ギリギリの作業。
タイムリミットが迫る恐怖。
俺はこの極限の状態を毎回楽しんでしまっているようだ。
『スリル』
11/12/2022, 12:46:30 PM