Kira

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「ずっと離さない…」
「ほら、せっかく海見に来たんだから行こう?」

その手がしっかりと握られたままその手に引っ張られる。
「風が丁度いいね?あ…」

彼女の髪がふわっと靡く。
「髪の毛ちょっと結びたい」
「ん?あぁ、ポニーテールでいい?」
「えっ、あ!ちょっと」

彼が左手首に付けていたヘアゴムを取ると
すぐに後ろに回り込む。

そのまま髪を優しく触った。

「それくらい自分でやるからいいよ!?」
「彼氏らしい事少しやらせてよ?」
「それ関係なくない?」

彼女が砂浜に座ると彼がそのまましゃがみこむ。
優しい大きい手が自分の頭に触れるのがわかる。
その髪の1本1本を優しく撫でるのもわかる。

「私…この時の事忘れないような気がする」
「なに?」

「きっと一生忘れないって言ったの。
貴方とやっと気持ちが伝わって、
幼なじみじゃなくなって彼氏彼女って関係になって
……こうして同じ景色」

その瞬間自分の顔が横を向く。

そのまま柔らかいものが触れる感触がした。

「これでカップルだ」
「……キス…」
「……俺の気持ち伝わった?」


彼女がクスッと笑う。
「伝わんない!」
「んじゃあちゃんと俺を見ろ…」

そのままお互いが目を閉じる。
お互いが見つめ合う。
目の前に見えるのはただずっと静かに波立つ海しかない。


目を閉じて景色が見えなくたって…
目を開けたら、そこにはお互いが大好きな人がいる。

ずっとずっとこれからその景色を一緒に見れるよね。
ね?そうでしょう…?

episode 『君と見た景色』

3/21/2025, 3:19:18 PM