海の底
「あたし、クラゲになりたいの。」
そう、彼女は言った。
クラゲが好きな彼女が、そう言った。
「クラゲって、脳みそがないの。ただ、海の中をぷかぷか浮いてるだけ。」
それが好きなのだと、彼女は言った。
脳みそが無ければ何も考えられない。
何も、考えずにいられる。
だからクラゲになりたい。
その言葉は、彼女のSOSに感じた。
もう、何も考えたくないという、心の叫びに聞こえた。
海の底で、何も見たくないのかもしれない。
「私は、カラスになりたい。」
海にも、山にも、都会にも。どこにでもいるカラス。
カラスになれば、どこへだって飛んで行けると思うからだ。
どこかへ消えてしまいたい私と、考えることに疲れた彼女。
似ているけど、似ていない。そんな私たちの、たわいない会話だった。
1/20/2026, 11:52:37 AM