ヒロ

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きっかけは些細なことだ。
足早に廊下を駆けていく女の子。
昼休みの、いつも同じような時間に走っていくものだから、だんだんとそれが記憶に残っていって。
いつの間にか、ぱたぱたという足音の特徴まで覚えてしまっていた。

そんな彼女と、廊下ですれ違いざまに落とし物を拾ったのを機に互いを認識し合うようになり。
その後も見かければ、何となく会釈を交わす間柄に変わっていった。

こうして降り積もった感情に、果たして名前が付くことはあるのだろうか。

「なあ、お前。気になる奴とかいねーの?」
何も知らない友人の問いにしらを切る。
「ん~。どうだろうなあ」

いつか観念するその日まで。
その答えはまだまだ保留でいさせてくれ。


(2025/06/25 title:080 小さな愛)

6/26/2025, 10:06:23 AM