駒月

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 紅葉が散り、実りの秋が終わりを告げる。
 外に出ると吐く息は白く、冷たい空気に肌がぴりりと引き締まる。

「まだ降らないのな」

 ぽつりと独り言を漏らすと、ちょうど家から出てきた妻に聞かれていたようで。

「雪?好きだねぇ。私は寒いの苦手だからわかんないけど」
「子供の頃はいつも雪が降るのが待ち遠しくてな。朝起きるのが楽しみでわくわくしてたんだ」
「へぇ、かわいいとこあるじゃん」

 妻は笑う。かわいいと言われてだいぶ複雑だがまぁそれはいい。

「雪が降ったら何するの?」
「そうだな……かまくら作ったり、雪だるま作ったり」
「やっぱりかわいいねアンタ。雪合戦って言うかと思ってたのに」
「笑うな」

 またかわいいと言われてしまった。別にいいだろう、男が雪だるまを作ったって。

「拗ねちゃった?ごめんごめん」
「拗ねてない」
「今年は私も一緒に作るからさ?」
「そうか……じゃあ、余計に待ち遠しいな」

 そうだ、俺には妻がいる。
 来年、再来年あたりには家族が増えているかもしれない。寒い寒いと言いながら、皆で雪遊びをするのも良いかもしれないと思う。
 そんなあたたかな未来のことを頭に思い描いて、今日もひっそりと雪を待とう。




【雪を待つ】

12/15/2023, 12:57:27 PM