ㅤ吹く風の冷たさに閉じた目を、恐る恐る開いた。脚元の枝をしっかり掴んで背を伸ばすと、少し高い位置にある隣の樹を見上げる。
「がんばれー」
「おちついて!」
「だいじょうぶ、できるよー」
「下は見るなー!ㅤ前だけ見ろー!」
ㅤきょうだいたちは、みな離れた枝まで飛んでしまった。さえずる声がはるかに遠い。
ㅤ無言で頷くママに背中をトントンと叩かれ、広げた両腕をやみくもに動かした。さえずりが甲高くなる。ぼくの脚が思い切り枝を蹴る。
ㅤバランスを崩した身体がぐらりと傾いた。あっ!、と思った時には、きょうだいたちの叫びが……みるみる……遠く。
『……遠く』
2/8/2025, 12:46:49 PM